乃木坂46はモッブを生み出さない~坂道ナショナリズム論②~

まず、ナショナリズム全体主義の誤解から解いていきます。


そもそも、全体主義とは何でしょうかか。
ここでは、「独裁者による支配を歓迎する雰囲気、集団」としておきます。

 

じゃあ、なんで、国家は全体主義に走ってしまうのか?
その背景には、「ヨーロッパのアイデンティティの喪失」があるわけです。
どういうことか。
近世のヨーロッパがヨーロッパたる所以は、その「科学技術」で他国を圧倒していた点にあるわけです。
イギリスの蒸気機関などが、いい例。

 

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蒸気機関


だけど、科学というのは、後出しじゃんけんみたいな側面があって、後発国が真似して改良して、もともとの国よりもレベルを高められるわけです。
すると、科学技術力で他国を圧倒していたヨーロッパは、アメリカや日本などに科学技術力のお株を取られてしまい、結果、アイデンティティを希薄させてしまうことにつながります。
そのアイデンティティの喪失に抗うべく登場したのが、全体主義国家になります。

 

そして、その全体主義が動き始めた時代に登場したのが、ハンナ・アーレント
ハンナ・アーレントの新しさは、帝国主義を「無限に回るモーター」と表したことにあります。
ロジックは以下。

帝国主義化すると、無限に利潤を求める

市場が”独り歩き”する

利益を求め、異国の地を求める個人(これをモッブという)が増加する

このモッブ。ある特徴があります。それは、
キリスト教の教えを敬虔に信じている
ということです。
じゃあ、質問です。
このキリスト教の教えをめちゃんこ信じてるモッブが、キリスト教の教えに出てこない「黒人」と出会ったらどうなるでしょうか?
いままで、自分のすべてのよりどころにしていたキリスト教の教えに出てこないわけです。
自分というのが何なのか?
という考えを持ってしまいます。
結果、存在が「無」になるわけです。

 

自分のアイデンティティを失うわけです。それでいいわけがありません。結果、どうなるか。
アイデンティティを守るための非常手段としての人種主義思想に入ってしまうわけです。

 

これって、さっき紹介した全体主義の背景に似ていますよね。
自分のアイデンティティが危機にさらされる

結果、極端な思想・主義に走ってしまう

国家レベルでも個人レベルでもここは変わらないのです。

 

 

話は変わります。
「高文化」という言葉があります。
これは、子供たちに同じように教育を受けさせて、平均化するというものです
すると、子どもたちはどういう考えるになるか。
携帯できる長所(学歴、資格など)を身に着けさせることを考えるわけです。
どこに行っても、通用する人間になるということです。
だけど、全員が全員同じようになるわけがありません。
いわゆる落ちこぼれみたいな人って絶対出てきてしまいます。
これが、モッブに近い存在になるわけです。

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高文化とモッブ

 

そして、このモッブみたいな存在の国があります。
それが、WW1で敗戦した「ドイツ」「ロシア」です。

 

さっき述べた全体主義のはなし。まさしく、ドイツとロシアは、全体主義国家にその後なってしまいました。
その背景には、「負い目」があるわけです。

 

さきほど高文化のところで、「携帯できる長所」という話をしました。
このドイツなどは、人が携帯できる優位性に「血」を求めてしまったのです。

 

ここで、ピースは揃いました。
ドイツやロシアは、モッブに近い存在で、携帯できる長所を持てないでいる。
そこで、何を携帯できる長所としたか。
それを「血」にしてしまったわけです。
しかし、「血」に優位性があるわけがありません。
ですが、無理矢理に「血」という架空の根拠を基にして、民族の定義を行ってしまったのです。
これは、土地柄などの伝統を無視した線引きです。
つまりは、この伝統を無視するところに「全体主義」のポイントがあるのです。

 

一方、ナショナリズムは、土地などの伝統を重んじる考えに近いのです。
だからこそ、全体主義ナショナリズムと同義に語るのは間違いになるわけです。